大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜家庭裁判所小田原支部 平成9年(少)1729号

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

平成9年10月31日付検察官作成に係る送致書「審判に付すべき事由」に添付の別紙犯罪事実記載の事実と同一であるので、これをここに引用する。

(適用法条)

第1ないし第3の各事実について いずれも刑法60条・204条

第4の事実について 同法60条・261条

(処遇の理由)

1  本件非行は、暴走族「○○」の構成員となり、特攻隊長の肩書を有する少年が、同暴走族の現役メンバーやOB、他の暴走族構成員、更には、暴走族未加入の少年と交遊関係にある仲間ら十数名と一緒になって敢行した傷害・器物損壊の事案である。

少年は、仲間から走り屋を潰しに行くということを聞き、その数日前に暴走族の後輩が所謂走り屋風の車と接触事故を起こして入院したことがあったことから、その仕返しに行くのであろうと思い、また、潰しに行くと言うことは、相手を殴って怪我をさせたり、車やオートバイを壊したり、金を持っていれば奪うことを意味していると思っていた。そして、少年は、仲間らと集って走り屋を潰すことを話し合った後、仲間の運転するオートバイに同乗した際、同人の持参した金属バットを所持し、仲間ら十数名とオートバイ4台・自動車2台で(少年の平成9年10月13日付警察官調書・なお、Dの同月11日付警察官調書ではオートバイの数が5台となっている。)集団となって暴走族風の走行をしながら町中を排徊していた(本件直前に少年らの集団走行状態を現認した警察官は、少年らのオートバイが爆音を響かせながら対向車線を進行してくるのを認めたと少年に関する現行犯人逮捕手続書に記載している。)。そして、本件事件現場に差し掛かった際、後続の仲間の1人が何ら落ち度のない被害者・Gに対し、因縁を付けたうえ矢庭に殴り掛かったのを契機に、皆でG及び同人の車両に乗車していた他の被害者2名に対して暴行を加え始めたことから、少年も現場に戻って、前記金属バットでGの車両の後部ガラスを叩き割ったりしている。

少年らは、全く落ち度のない被害者らに対して、集団で一方的に強烈な暴行を加えており、その態様は誠に悪質・危険極まりのないものである(なお、上記暴行開始から僅か数分後に前記警察官らが現場に急行したが、その間に少年の仲間がGから現金在中の財布を奪取している。)。

少年は、「皆がやるなら自分だけいい子になる訳に行かない。皆がやるなら自分もやらなくては、という気持だった。」というように、当初走り屋を積極的に潰しに行くということまでの気持を持っていなかったものの、主体性を欠き、無批判に不良性を帯びた者達に追従したうえ、殺傷力のある金属バットを用いて車両のリアウインドウを損壊するなど積極的に行動しており、その時の気持を「ガラスを割ったときには面白くて気分がすっきりした。」というように、いざ非行を行うということになるとこれを楽しんで行っているところがあり、少年の暴走族活動も同じ側面があると窺える。

2  少年には、その幼児期に、中学在学中の12歳年上の兄(現在右翼団体「○○」会長)と8歳年上の姉が既に非行化していたことや少年が中学入学した頃には両親が離婚するなどの家庭的負因が存し(少年は、担当鑑別所技官に対し、「父親の記憶がない」と述べているようで、幼少の頃から、少年と家族との繋がりが希薄のようである。)、これらが少年の素行に大きな影を落としているようであり、少年は、中学2年生の頃から不登校状態となったり、不良仲間と万引をしたり、喧嘩を繰り返したりしていた。

少年は、中学卒業後、就職した塗装店も3か月足らずで辞め、その後は殆ど無為徒食的状態に陥り、平成8年夏頃に友人や先輩らに誘われるまま、前記暴走族に加入し、特攻隊長の肩書まで有するようになり、また、昼夜逆転の生活を送るなどその生活態度は誠に不健全なものとなっているが、少年にこれを真摯に改善しようとする意欲に乏しいため、これが改善の方向に向いていない。

3  少年は、自己の能力に自信を持てないため(鑑別所内での新田中B式知能テストによれば、被告人は、SS=30・IQ=70で「劣」の評定を受けている。)、付和雷同的で、仲間の前では承認を得ようと調子を合わせたり、虚勢を張り易く、自制心を欠如した衝動的・場当たり的な行動に出易いなどの性行上の問題点を抱えている。

4  他方、保護者である母親には、このような日常生活上の問題点・性行上の問題点を抱える少年に対する具体的な監護方針が窺えず、他に少年に対する適切な監護を期待し得る人物が少年の周囲にはいない。

5  これら本件非行内容及び少年の事件への関与の程度、少年の日常生活の現状、その性行上の問題点、保護環境の現状等に鑑みると、家庭裁判所の事件係属が2度目ではあるが(初回は2年前の占有離脱物横領による審判不開始)、少年の健全育成と再非行からの保護を図るためには、少年を施設に収容したうえ、少年に対し、十分内省を深めさせると共に主体的・自律性を養う生活指導と勤労意欲を持たせるための職業指導を加える必要があると認められる(なお、鑑別結果通知書に指摘があるように、少年の性行上の問題点が大きいことから、主体的・自律的生活を行わせるには、相当時間を要するものと思われる。)。

6  よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項、少年院法2条を適用して、主文のとおり決定する。

(別紙犯罪事実)

被疑少年H・Hは、少年のB、同C、同D、同F及びE外数名と共課の上

第1 平成9年10月11日午前1時40分ころ、神奈川県愛甲郡○○村○○××番地○○橋上において、G(当23年)に対し、その顔面を足蹴にするなどの暴行を加え、よって、同人に対し、加療約1週問を要する左眼瞼下裂創、左肘打撲の傷害を負わせ

第2 前記日時場所において、同所に停車中の普通乗用自動車内に着席していたH(当18年)に対し、その頭部目がけてガラス瓶を投げつけるなどの暴行を加え、よって、同人に対し、加療約1週間を要する頭頂部裂創の傷害を負わせ

第3 前記日時場所において、同所に停車中の前記普通乗用自動車内に着席していたI(当19年)に対し、その右上腕部を足蹴にする暴行を加え、よって、同人に対し、加療約3日間を要する右手打撲の傷害を負わせ、

第4 前記日時場所において、同所に停車していた前記G所有の前記普通乗用自動車1台のウインドガラス等(損害約72万7,330円相当)を所携の金属バット等をもって叩き壊し、もって、他人の右器物を損壊したものである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!